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デジタルサイネージコラム

本当は教えたくない!?今後期待される屋外デジタルサイネージを失敗しない為の注意点。

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デジタルサイネージと聞くとなぜか「屋内での設置」のイメージがありますよね?その通りです。現在のデジタルサイネージのほとんどは室内に設置されています。これはデジタルサイネージの要素で絶対的に外せない「ディスプレイ」がそもそも室内用であるからです。もともとは家庭用テレビの連続稼働時間と耐久性を強化してチューナーを無くしたものが「業務用ディスプレイ」となります。また、テレビを外に置くなんていう文化はありませんから、この流れは当然なことですね。

しかし、これがデジタルサイネージの最大の弱点でもあるのです。

デジタルサイネージは「情報」や「広告」を目的とした製品ですが、「情報」や「広告」という市場は昔から屋外でもあたりまえのように存在しています。

視点を変えれば、いくら素晴らしい「情報コンテンツ」や「広告」を訴求したとしても、お客様が施設内に入った後の訴求であるという事になります。

しかし、お客様の一番解決したい課題は実は「集客」だったりします。いくら施設内のデジタルサイネージで訴求してもお客様がそこにいなければ情報を伝える事は出来ません。

デジタルサイネージを使った訴求で一番重要なロケーションは店や施設の外にあるといっても良いでしょう。

最近では「屋外設置」のデジタルサイネージも徐々に増えてきておりますが、もともと屋内での利用として設計されたデジタルサイネージを屋外に設置するのは簡単ではありません。

弊社も屋外設置をチャレンジし始めたころは失敗続きでした。今では直射日光下で5年以上連続稼働でも問題を起こさず、当たり前のように「屋外デジタルサイネージ」を設置しており、多数の官公庁でも採用されるようになりました。

屋外デジタルサイネージはお客様のニーズに直結しており、今後もっと広がる可能性を追い続けてきた弊社だから持っているノウハウや注意事項のいくつかを皆様のお役に立てればと思い、まとめますので参考にしていただければ幸いです。

 

目次

■屋外で対策すべき要因は想定外に多い

・直射日光

・外気温

・湿度

・雨、風、ホコリ

・温度変化の大きな差

・雷

・雪

・台風

・電気ノイズ

・いたずら

・ゴミ

・各自治体方針に基づく景観への配慮

 

上げればきりがないほど、屋外には対策しなくてはならない要因が沢山あります。

 

■屋外デジタルサイネージディスプレイの仕様には要注意

よく屋外デジタルサイネージという製品を見かけますが、故障しているもの、消えているものを良く見かけませんか?

中には実際に屋外で利用できないものも多く見かけるため、製品選定には注意が必要です。

特に注意したい項目は「対応環境温度」と「防水防塵規格」と「直射日光に対する性能」です。

 

※対応環境温度に要注意!

日本は夏もあれば冬もあり、その気温差はとても大きいです。今年2020年8月に日本の歴代最高気温が41.1度と更新されたばかりです。冬も同じです。関東甲信での2020年の最低気温ランキング1位は那須高原のマイナス12度です。(ちなみに全国の歴代ランキングは北海道旭川で1902年にマイナス41度というのがありました。

このデータからみても関東甲信で設置する場合は外気温対応がマイナス12度~41度という数値には対応していないといけないという事がわかります。

せめて対応環境温度は-20℃~55℃は欲しいですね。

また、外気温と太陽光、アスファルトからの照り返し熱によって、デイスプレイや筐体はさらに温度が上昇します。夏場に車の車体に触れるとやけどするくらいの温度(70°~80°)になっている事がよくありますよね?その現象です。

 

このことから、屋外仕様をうたうデジタルサイネージの対応環境温度と本体の温度上昇に対する対策がどのように施されているのか?をきちんと明確にする必要があります。

記載したとおり、環境温度と本体上昇温度は全く異なるため、環境温度だけでは判断できないといえます。

 

※防水防塵機能(IP規格)に注意!

これはそのものの防水保護構造及び保護等級と言う企画でIPとはIngress Protection(侵入に対する保護)の略称です。IP●○というように等級で記載されておりますが、●(第一数字記号)は「人体・固形物体に対する保護」を表し、○(第二数字記号)は「水の侵入に対する保護」を表しています。

 

<第一数字記号>●  保護の程度(テスト方法)にて記載

IP0○=保護なし(テストなし)

IP1○=手の接近からの保護(直径50mm以上の固形物体が内部に侵入しない)

IP2○=指の接近からの保護(直径12mm以上の固形物体が内部に侵入しない)

IP3○=工具の先端からの保護(直径2.5mm以上の固形物体が内部に侵入しない)

IP4○=ワイヤーなどからの保護(直径1.0mm以上の固形物体が内部に侵入しない)

IP5○=粉塵からの保護(機器の正常に支障をきたしたり、安全を損なうほどの量の粉塵が内部に侵入しない

IP6○=完全な防塵構造(粉塵の侵入が完全に防護されている)

記号でXが採用されている場合は非適用と言う意味となります。

 

<第二数字記号>○ 保護の程度(テスト方法)にて記載

IP●0=水の侵入に対しては特に保護なし(テストなし)

IP●1=垂直におちてくる水滴によって有害な影響をうけない(200mmの高さより3~5mm/分の水滴,10分間)

IP●2=垂直より左右15°いないからの降雨によって有害な影響を受けない(200mmの高さより15°の範囲3~5mm/分の水滴10分間)

IP●3=垂直より60°いないからの降雨によって有害な影響を受けない(200mmの高さより60°の範囲3~5mm/分の水滴10分間)

IP●4=いかなる方向からの水の飛沫によっても影響を受けない(300~500mmの高さより全方向に10ℓ/分の放水、10分間)

IP●5=いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない(3mの距離から全方向に12.5ℓ/分・30kpaの分流水3分間)

IP●6=いかなる方向からの水の強い直接噴流によっても有害な影響を受けない(3mの距離から全方向に100ℓ/分・100kpaの分流水3分間)

IP●7=既定の圧力、時間で水中に没しても水が浸入しない(水面下15cm~1m 30分)

IP●8=水面下での仕様が可能(メーカーと機器の仕様者間の取り決めによる)

記号でXが採用されている場合は非適用と言う意味となります。

(IEC 60529 JIS0920 基準に基づく)

 

この規格から、屋外できちんと利用するためには砂埃、又は大雨や台風の観点から、最低でもIP65は必要という事になります。

この等級以下で設計されている場合は、埃が多い箇所、または大雨、や台風で故障するリスクはあるという事になります。

また、この等級は規格に基づく試験が必要となりますので、勝手な表記はできません。きちんと、試験証明書がある事を確認しましょう。

 

※直射日光に対する対策に要注意!

 よく見かける屋外デジタルサイネージディスプレイ製品で、IP規格や環境温度は屋外仕様を満たしているように記載されていますが、直射日光下では利用できませんという注意事項が記載されているものがあります。これはまた別の要素で、屋外ディスプレイの最大の敵であるのは太陽光です。ディスプレイの特徴である「液晶」は温度が上昇すると中の液体が固まってしまう症状が発生します。これが良く見かける「液晶黒化」という画面の一部が黒くにじんでくる症状です。

太陽光は赤外線と紫外線により物体の表面に熱を蓄積していきます。コンテンツを見せるために物理的に保護ができない液晶面はこの要因により温度が上昇してしまいます。これはたとえ直射日光でなくても、温度が上昇するまでの時間の問題であるため、完全な日陰でない限りは避けられない要因です。

この問題は、環境温度対応でもなく、IP規格でもなく、液晶の表目温度に対する対策が取れているか?で決まってきます。こちらの記載はされているものがほとんどないため、注意が必要です。直射日光下の利用を保証できるか?出来ないか?を確認しましょう。

 

※強化ガラス採用はマスト条件

冒頭に記載したように、屋外でのデジタルサイネージは屋内とくらべて、配慮すべき要因が沢山あります。たとえば液晶の表面は当然ガラスですが、屋外では故意に壊されるだけでなく、たとえば風により物が飛んできて物かったり・・・なんてこともあります。そのため、ガラスは強化ガラスである必要があります。強化ガラスは通常のガラスとくらべて約3.5倍の耐風圧強度をもっています。普通のガラスでは不測の事故で割れてしまったり、割れて飛び散ったガラスで人がケガをしてしまうなどの二次災害だって想定できます。このため、強化ガラスの採用はマストであると考えたほうが良いでしょう。

 

※内部空気循環機能に要注意!

屋外デジタルサイネージディスプレイは当然、防水機能だけでなく、防塵機能を持たざる終えない為、必ずフィルターが搭載されています。フィルター構造をうまく使って内部への埃の侵入を防いでいることになります。当然このフィルターが目詰まりしてくると、内部空気循環が悪くなり、内部の温度上昇の要因に直結します。

ここで注意したいのが、フィルターが交換できるか?出来ないか?です。

これは屋外デジタルサイネージを長期的にどれだけ安定させることができるか?に直結しています。フィルターが交換できない設計のものは設置からある程度は性能を発揮できても、上記の理由から後に必ず故障に繋がってきます。

また、内部空気循環が悪くなると、外気温と内部温度の差が広がり、結果的に結露を起こす事にも直結してきます。これにより二次的要因での故障も想定できます。

その他、フィルター交換が出来るといっても、屋外デジタルサイネージのディスプレイは大きくなればなるほど、簡単には取り外せないので、フィルターの位置設計がきちんと配慮されているかも確認しましょう。

埃が多い環境下では約年2回ほどのフィルター交換が必要になりますが、そのたびに取り外し、取付工事が発生するような構造や筐体設計をすると、後に結果高い物になってしまいます。これは専門知識が無い会社の設計でよくありがちな事なので、初期導入だけでなく、保守やメンテナンス性についても一般的な配慮が必要です。

その他、当然屋外では太陽光下で画面を見なくてはいけないため、画面の輝度が高い事が条件になります。当然輝度はバックライトの明るさになります。ただし、輝度が高いということはそれだけ消費電力も上がり、内部の熱量も上がります。そのため、ただ輝度が高いだけでなく、性能とのバランスが取れた上でなるべく輝度が高い設計が施されている事が重要な要素という事になります。

 

※電源構造に要注意!

屋外にデジタルサイネージを設置するには当然、電源も必要になってきます。屋内環境のようにあたりまえのように近辺に電源が無い事が普通です。時には電柱から電源を取得する事もあります。また屋外の電源は室内用とくらべてノイズが走っていたり、通常の電源回路では耐えられないような電源というケースも多くあります。このことから、電源仕様が屋内仕様をそのまま採用されている設計のものはかなりリスクが高い状態にあります。

そのため、電圧範囲やノイズ対策、雷に備えた対策など、屋内ではそこまで気にする事のない対策がかなり重要な要素です。

電源の仕様についても対策が施されているか?を確認しましょう。

 

※設置方式についても考えてみる必要があります。

屋外デジタルサイネージの方式はおおよそ、「空冷方式」か「エアコン搭載方式」となります。「空冷方式」は外気温をうまく利用して設計する方式で個々のハードウェアが温度対応など屋外環境に必要な要素を持つ、または持たせる設計が施されています。

「エアコン方式は」筐体そのもので室内を作るという発想で、内部には屋内製品が施されています。

ここでは「エアコン方式」についていくつか注意点を記載します。

エアコン方式は内部ハードウェアは屋内製品のため、コストが安いイメージがありますが、エアコンを搭載するために以下の要素が付きまといます。

・エアコン搭載のためのスペース確保で筐体が想像以上に大きくなってしまう。

・エアコン搭載のため、電源が200V仕様となる。

・エアコン搭載のため、商品電力が大きすぎる。

・エアコンが壊れたら、内部ハードウェア全てが故障する。

・上記のためのセンサーや監視など付随コストも大きい

・筐体が大きい=基礎構造が大がかり=工事コストが高い。

・エアコン構造のため、室外機同様音がうるさい。

 

弊社はこのことから「空冷方式」をお勧めします。

 

 

※配慮すべきはディスプレイ部分だけではない!

ここまで屋外デジタルサイネージの「ディスプレイ」についての注意点について記載してきましたが、注意が必要なのはディスプレイだけではありません。

デジタルサイネージとして成立するには、STBやネットワーク機器も必要不可欠です。

いいかえれば一般的な屋内用のSTBやネットワーク機器では屋内環境で利用できないため、

全てのハードウェアについての温度対応や対応施策が必要になってきます。

 

※まとめ

一言でまとめると、屋外デジタルサイネージは「簡単ではない」という事です。デジタルサイネージはデイスプレイだけでなく、STB、ネットワーク機器、工事、保守メンテ、電源構造、各自治体の定める景観配慮など全ての要素を屋外用として取りまとめる必要があります。言い換えれば屋内デジタルサイネージの構築が出来るからと言って、屋外のための専門知識や経験値がなければ屋外サイネージの構築が出来ません。

この記事を読んでいただき参考にしていただければ幸いですが、屋外サイネージはハードルが高いイメージだから、やらない方が良いという事ではありません。屋外サイネージ市場はまだ日本に少ないため、発展途上にある状態なだけです。

本記事は弊社の屋外デジタルサイネージノウハウのごく一部です。

弊社の「直射日光下の利用を保証する」屋外デジタルサイネージは日本国内官公庁他、多数採用されております。弊社なら、「安心」できる屋外デジタルサイネージの提供が可能ですので、屋外デジタルサイネージを検討しているお客様は是非一度弊社にもお声掛けください。

 

最後まで本記事を読んでいただき、ありがとうございます。

毎年、夏が終わると故障している屋外デジタルサイネージを良く見かけますが、この記事を読んでいただいている方々が、その被害者でないことを願っています。

 

エヌエスティ・グローバリスト株式会社

デジタルサイネージ事業部

 

 

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