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デジタルサイネージコラム

【進化する3Dホログラム】3Dホログラムは触れる時代へ

  • # 3Dホログラム
 

従来の3Dホログラムは立体的な映像が見られることで注目を集めていました。
しかし、時代は既に次のステップへと進み、3Dホログラムは触れるところまで進化しています。
今回は3Dホログラムがどのようにして触れるようになったのか、また今後どのようなことが期待できるのかについてお話いたします。

 

■進化する3Dホログラム

これまで3Dホログラムの分野では様々な研究が進められてきました。まずは3Dホログラムの成長を紐解いてみましょう。

・今までの3Dホログラム
これまでの3Dホログラムは動きが遅く、持続時間が短いという問題がありました。
またイギリスのサセックス大学の研究チームによって発表された論文によると、従来の3Dホログラム技術は「触覚や聴覚に作用するコンテンツの生成が不可能な動作原理に依存している」とされています。どれだけ迫力のある3Dホログラムでも、触れることができないということです。

・MATDとは
同研究チームは上述した問題点を改善するためMATD(Multimodal Acoustic Trap Display)という技術を開発しました。MATDでは視覚だけでなく触覚や聴覚にも作用するコンテンツが生成できるようになります。
MATDには音波によって物体を構成する複数の微粒子を操作する「音響泳動」という技術が使われており、小さなスピーカーが多数配置されている小型の箱内に映像が投影されます。

・2015年には触れる小さなホログラムが日本で発表されていた
日本では2015年に触ることができる小さなプラズマホログラムが誕生していました。
筑波大学、東京大学、名古屋工業大学の研究チームによって生まれたホログラムはFairy Lightsと名付けられました。
Fairy Lightsではフェムト秒レーザーを使ってホログラムを投影しています。
レーザーで物質を励起することで「ヴォクセル」と呼ばれる点を作り、触れる3Dホログラムを描いています。

フェムト秒…通常の1秒の千兆分の1
励起…外部エネルギーを加えることで原子や分子などを低く安定したエネルギーよりも高いエネルギー状態に移すこと

 

■触れる3Dホログラム集

触れる3Dホログラム集

現状の「触れる3Dホログラム」とはどういったものか、3つご紹介いたします。

・MR(ただしゴーグルが必要)
2019年11月に日本でも出荷が始まった、ビジネスユーザー向けの3Dホログラムが投影できる拡張現実ウェアラブルコンピューターデバイスHoloLens2。
HoloLens2はMR(Mixed Reality)対応です。MRはVRやARとは異なり、現実世界に高解像度の3Dホログラムを投影します。MRでは投影されたホログラムに触れたり、動かすことが可能です。
イタリアの高級コーヒーメーカー デロンギ・ジャパンにコールセンターのアウトソーシングサービスを提供しているベルシステム24は、実際にHoloLens2を活用したバーチャライゼーションなコールセンターを推進しています。
デロンギ・ジャパンのコールセンターによると、「HoloLens2を導入したことにより、高品質なサポート体制を提供することができるようになった」とのことです。

・水蒸気型3Dホログラム
ペッパーゴースト(視覚トリックを応用した技術)を使った水蒸気型3Dホログラムは、水蒸気をスクリーンにして光を投影させ映像を映し出します。水蒸気なので投影された3Dホログラムに触れることができ、触れたときに水蒸気が乱れることで変化を付けることもできます。多少立体感が少ないものの、独特の変化が生まれることで非常に面白いコンテンツを配信することができます。

・超音波を使った3Dホログラム
イギリスのブリストル大学は超音波を使った触覚デバイスを開発しました。
特定領域に複雑な超音波のパターン焦点を合わせ、空気を乱すことで何もない場所に触れられる立体を描きます。
しかしこの技術単体では映像として視認することができません。
フランスベースのImmersionはHololensと超音波スピーカーの触覚フィードバックシステムUltrahapticsを組み合わせることで触ることができる映像を公開しました。
超音波の技術は3Dホログラムを新たなフィールドに導いているようですね。

 

■現代の3Dホログラム実例

最後に現代で実際に使われている3Dホログラムの実例を3つご紹介いたします。

・Alexander McQueen2006年秋冬コレクション
世界的に有名なファッションブランドAlexander McQueenは、2006年秋冬コレクションで3Dホログラムの技術を使いました。今から15年近く前のことですが、現在でもエンターテインメント性のある美しい3Dホログラムです。
何もない空間に白いモヤのような煙が現れると、徐々に形を変えて最終的にモデルのケイト・モスになります。ケイト・モスはしばらくの間くるくると踊り、徐々にモヤに戻って消えてしまいます。
この3Dホログラムはブランド創業者のAlexander McQueenとビデオ作家Baillie Walshが共同で制作したもので、ショーのあともメトロポリタン美術館やヴィクトリア&アルバート美術館で展示されました。

・世界初!3Dホログラム映像がフロントを務めるホテル
日本の旅行会社エイチ・アイ・エス ホテルホールディングスが展開する「変なホテル」シリーズは、多くの仕事をロボットなどの科学技術に任せたことで有名です。
2019年9月1日に開業したシリーズ14件目の「変なホテル東京 浅草田原町」のフロントにいるのは、なんと人間ではなく3Dホログラムの執事です。しかも忍者や恐竜など、執事以外にも多様な姿に変化します。
3Dホログラムによるチェックインは世界初のシステムです。エンターテインメント性だけでなく、非接触チェックインで感染症対策にも役立ってくれそうですね。

・3Dホログラムの女の子と暮らせる!?IoT製品
IoT製品の企画・開発を手掛けるウィンクルという企業では、小さなケースの中に女の子のキャラクターが投影されるGateboxという装置を開発しました。
3Dホログラムのキャラクターと会話をすることで、人間に代わって家電の操作を行ってくれます。装置はインターネットや家電と繋がっていて、通常の会話以外に天気を教えてくれたり、照明を付けてくれたりと役立ってくれます。
元々家庭用として開発されましたが、ビジネスシーン向けのGateboxも登場しました。
メインキャラクターには可愛い女の子が設定されていますが、オリジナルキャラを設定することも可能なので、企業や施設のマスコットに変更して施設案内などをさせることもできます。導入すればユーザーに最先端技術による接客を体験してもらうことができます。

 

触れる3Dホログラムが普及するにはまだ時間がかかりそうですが、人々の生活に役立つよう多くの3Dホログラム技術の研究が進んでいます。
これからも進化を続ける3Dホログラムの技術に注目していくと面白いかもしれませんね。

 

 

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