デジタルサイネージコラム
■3Dホログラムとは
まずは本来の3Dホログラムと疑似ホログラムをご説明します。
・3Dホログラムの特徴
「3Dホログラム=浮かび上がる立体映像のこと」と思っている方は多いのではないでしょうか。しかし、3Dホログラムは本来、「ホログラフィ技術を使って3D投影をすること」を指します。つまり映像そのものが3Dホログラムなのではなく、「肉眼でどの角度からも自由に見られる立体映像を投影する技術」が3Dホログラムなのです。
・疑似ホログラムとは
ホログラムは本来、光の振幅と波長、「位相」を記録して投影します。位相とはどの方向から光が来ているのかを示す情報のことです。位相を記録するには、参照光という光源を使用します。しかし疑似ホログラムでは位相や参照光を使用しません。立体映像でありながら、位相や参照光を使わないホログラムを疑似ホログラムと呼びます。
・有名な疑似ホログラムにはどんなものがある?
3Dホログラムに似た立体映像を投影する技術で有名なものは多くあります。今までご紹介してきたペッパーズゴーストやファン型ディスプレイも厳密には3Dホログラムではなく、疑似ホログラムという扱いになります。ペッパーズゴーストは正面以外から見ると立体映像に見えず、ファン型ディスプレイは記録方法や再生方法が3Dホログラムとは異なります。
■3Dホログラムは投影された画像のことではない
具体的にどのようなものが3Dホログラムになるのか、こちらでご紹介いたします。
・3Dホログラムは映像の記録方法を含む技術のこと
3Dホログラムは映像の表示方法だけでなく、記録方法を含む技術までを指します。高精度の3Dホログラムはデータ量が多く、記録や再生にレーザー光を使用するため特殊な機材が必要になります。設備も大きなものが必要になるので、誰でも気軽に利用することは現状まだ難しいといえるでしょう。その点、疑似ホログラムは導入コストが低く、誰でも利用しやすいというメリットがあります。
・3Dホログラムの再生方法について
3Dホログラムでは物体が発する物体光と参照光であるレーザー光で媒体を照らし、2つの光がぶつかることで発生した「干渉縞(かんしょうじま)」を感光媒体に記録します。干渉縞には光の波長や振幅、位相など多くの情報が含まれています。記録した干渉縞に再び参照光を当てることで立体映像が再生されます。これが3Dホログラムの再生方法です。
・何故疑似ホログラムもホログラムと呼ばれるのか
現在3Dホログラムはまだ研究と開発が進められている途中であり、実用には時間がかかります。しかし、世間ではホログラムのような立体映像を用いた表現を求められることがしばしばあります。そのため、本来の意味とは違うものの、技術の発展により立体映像に見える技術を3Dホログラムとして代用しています。
「holo」とはギリシャ語で「全て」という意味になります。写真(フォトグラフィー)と掛け合わせて「ホログラフィ(全てを記録する)」という言葉が生まれました。本来の3Dホログラムと立体映像に見える技術は仕組みが異なりますが、映像技術の開発が進むことで立体映像がホログラムと呼ばれるようになったのだと考えられます。
■利用されている3Dホログラムの実例
最後に、実際に使われている3Dホログラムについてご紹介します。
・サーカスの動物を3Dホログラムに
ドイツを拠点とするサーカス・ロンカリは、3Dホログラム映像の動物によるショーを行いました。会場内に合計11台のプロジェクターを設置することで、360度どの角度から見ても立体的に見える映像によるショーが実現しました。近年ではサーカスなどの動物を使ったショーは動物愛護の観点から批判的な意見が多く、イギリスでは2020年以降、巡回サーカスで野生動物を使うショーを禁止する法律が制定されました。イギリスをはじめ、世界で40ヶ国以上の国が動物を使ったサーカスを禁止しています。そのため、実際の動物を使用することをやめたロンカリではホログラムによるショーを開催することになりました。実際の動物を使わなくても3Dホログラムの技術によって、迫力があり感動的なステージを作ることができるということが分かります。
・等身大の高品質3Dホログラム映像が即日生成!
日本ではソフトバンク株式会社のグループ会社「リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社」が国内最大規模の3Dホログラム撮影スタジオ「xRスタジオ」を2020年2月からスタートさせました。スタジオ内には4Kカメラ搭載のキャプチャーステージ1台と撮影データを高速処理するレンダリングファームがあり、撮影した映像は即日3Dホログラム映像になります。
現在3Dホログラムと呼ばれている技術や映像は、本来の3Dホログラムではありません。しかし、疑似ホログラムであっても十分な宣伝効果や集客率向上の高価が得られます。これから3Dホログラムを含む、立体映像技術の発達が進んで一般的になる前に、一足早くホログラムを導入することで新しい宣伝効果や話題性を得られると期待できます。