デジタルサイネージといえば、皆さまがイメージするのは最終形のアウトプット(表示装置)の事でしょう。しかし
「デジタルサイネージとは?」でも記載したように、デジタルサイネージのアウトプットは、
最終的にどこで誰に対してどんなコンテンツを見せるか?の
アプローチを担う重要や要素です。
ここでは何を選定すれば、より良いアプローチが出来るか?の参考になるように、主な表示装置の特徴をメリット、デメリットを交えて説明させていただきます。
■ 業務用ディスプレイ
デジタルサイネージのアウトプットとしての利用率で圧倒的にNo.1なのが業務用ディスプレイです。
業務用ディスプレイは、家庭用テレビより耐久性が高く設計されており、デジタルサイネージに必要な機能を兼ね備えているディスプレイです。
言い換えれば「デジタルサイネージに特化したディスプレイ」と言っても過言ではありません。一般家庭用より価格が高いですが、家庭用ディスプレイとの違いについて説明させていただきます。
●業務用ディスプレイでないとダメな理由とは!?
・家庭用テレビは人の目に優しい設計の為、輝度が弱い・コントラストが弱い
・家庭用テレビは近く1~2Mから見る設計になっているため、広範囲には向いていない
・家庭用テレビは長時間点灯する設計になっていない。あくまで一般家庭用途
・家庭用テレビは一般家庭用電源利用想定の為、商用電源の電圧変化などに対応できない
・家庭用テレビは表面が保護されていない
・家庭用テレビは通電ONなど電源タイマーがついていない
・家庭用テレビは埃や振動など、外部環境に弱い
・家庭用テレビは縦で利用できない
・業務用ディスプレイは24時間連続稼働を前提に設計されている
・業務用ディスプレイは天吊りや壁掛けなどを想定したある程度の強度を持っている
・業務用ディスプレイは外部入力によるONOFFなどスタンバイモードが利用できる
・業務用ディスプレイは振動や埃などの対策設計が施されている
・業務用ディスプレイは使用環境温度範囲が広い
などがあげられます。
家庭用テレビをデジタルサイネージの設置環境で利用すると「故障のリスクがかなり高い」と判断できるでしょう。
●ディスプレイの輝度について
業務用ディスプレイの明るさ(輝度)は主にcd/㎡(カンデラ)を用います。国際単位系(SI)における光度の単位で、ルクス×距離² で求めることが出来ます。数値が高ければ高いほど明るいという事になります。カンデラの語源は英語の「キャンドル」と同じ語源で、ラテン語の「カンデーラ(ろうそく)」から来ていると言われています。なので、1cd/㎡はちょうどろうそく1本の明るさと同じくらいとされています。
●ディスプレイの解像度について
よくFULL HD とか4Kという言葉を耳にすると思います。これは液晶パネルが表示できる解像度を表すもので、画質の細かさを表す数値となります。一昔前はFULL HD (1920x1080pixel)が主流でしたが、最近では一般家庭用テレビも4K (3840x2160pixel)の市場が87%(2019年度)まで普及しており、現在は4Kの解像度がスタンダードになっています。
●ディスプレイの大きさについて
業務用ディスプレイのサイズは小さい32インチのものから80インチクラスまで様々なラインナップが用意されています。液晶パネルの市場の動向によって、年々大型化されていく傾向にありますので、アプローチ方法にあったサイズを選定してみてください。
※液晶サイズ一覧
またディスプレイを取付る際は人の目線がどこにあるか?という事も非常に重要な要素ですので、以下の数値からマイナス10cmが目線の位置として参考にしてください。
※日本人の平均身長
※男性20歳以上の平均身長=168.0±7.1cm
※女性20歳以上の平均身長=154.5±7.0cm
<メリット>
・高繊細な画像・映像の表現力はずば抜けている
・市場が確立されているためコストも手馴れている
・扱いやすい
・消費電力が小さい
<デメリット>
・視認距離が短い(遠くから見たインパクトは薄い)
・サイズが規格サイズしかないので、ジャストサイズを見つけづらい
・誰もが見慣れているため、インパクトが小さい
■タッチパネル(タッチパネルディスプレイ)
インタラクティブという言葉をよく聞くようにコンテンツを「タッチ」して操作する仕組みではディスプレイにタッチパネルの技術が採用されています。一般的には液晶面に赤外線を張り巡らせて、それを指先で遮断する事を判断して、座標軸の計算を行うという方法です。
ATMは切符の券売機などで当たり前のように使われており、かなり昔からある技術ですが、最近ではスマートフォンやタブレットの普及により、誰もが体験したことのある仕組みで、「お客様自身が操作する」事を目的としたコンテンツを採用される場合はタッチパネルを選定するというのもアプローチ方法の一つです。
タッチパネルは大きく分けて「シングルタッチ」「マルチタッチ」があります。
シングルタッチは1点を取得する方式ですので、指一本で触れることを前提としています。
マルチタッチは複数ポイントを取得する方式で、例えば指2本で画面上の操作対象をつまむように動かす「ピンチイン・アウト」操作を必要とする場合などに適しています。
場合によっては大きな画面で複数人が操作するという用途にも利用されます。
基本的にはマウスやキーボード同様にドライバなしで動作するものがほとんどですが、専用のドライバを採用されているタッチパネルはPCとの相性や互換性などをチェックして実際に使えるか?を確認した上で選定してください。
但し、誰もが触る前提でのアイディアはうまくいきません。いかにタッチしてもらえるかの根本的なアプローチの部分を考慮しないと、誰も触らないデジタルサイネージとなってしまうので、設計段階からよく考えて計画してください。
<メリット>
・タッチ操作というコミュニケーションが可能
・ログが取得できる
・膨大なコンテンツをカテゴライズして階層に分けることが出来る
<デメリット>
・1:1のコミュニケーション占有型のため、複数人数への訴求に弱い
・触ってもらえるまでのストーリーが難しい
・コストが高い
※コロナ禍でタッチ率がかなり低下している状態(2020年現在)
■ プロジェクター
プロジェクターは光を拡大して映像を投影するいわゆる投影機の事を表します。
光の投影距離が長ければ画角が大きくなっていくのが特徴です。
ディスプレイと比べて1台で投影できるサイズの自由度が高いため、デジタルサイネージのアウトプットとしてもよく利用されています。プロジェクションマッピングが認知された現在ではすでに皆ご存じでしょう。しかし、光を拡大させる原理の為、投影距離が長くなればなるほど明るさが落ちてしまいます。そのため、ディスプレイと異なるのは明るい場所での利用は周りの明るさに負けてしまうため、映像が薄くなってしまいます。また、投影面を大きくしても解像度は変わらないため、細かい文字などの表現も向いていません。
しかし、明るさの環境を整えたうえで、「面の大きさ」のインパクトを出す。動画や絵などのアニメーションを見せるなど、空間的要素をうまく取り入れた場合はとても効果的な印象を与えることが出来るのも大きな特徴です。これらの表現をすべて取り入れてクリエイティブクオリティーを表現したもの「プロジェクションマッピング」です。
ディスプレイでは出せない、映画のような質感が出せるのはプロジェクターの魅力の一つです。
プロジェクターの強みを生かせる空間設計から計画できると、抜群の効果を発揮してくれるプロジェクションもアウトプットの一つとして検討されてみてはいかがでしょうか?
<メリット>
・1台で表現できる面積が大きい
・投影面積あたりのコストが抜群に安い
・インパクトがある
<デメリット>
・旧モデルはランプ交換が必要(現モデルはレーザー型のため、ランプ交換不要)
・明るい環境に適していない
・鮮明な表現・細かい文字などの表現には適していない
・温度環境にシビア
・設置位置が限られている
・長時間稼働に弱い
・色見に関しての個体差が大きい
・設置位置によっては影が映る
■ LEDビジョン
一昔前はLEDビジョンは街中の大型ビジョンが主流でとても高い製品というイメージでしたが、一昔前のディスプレイの価格のように、市場が広がるにつれ、価格が落ちてきているため、デジタルサイネージのアウトプットとしてLEDビジョンを採用するユーザーがどんどん増えてきています。
LEDビジョンの特徴はその明るさと、視認性の高さです。ディスプレイと違い光が直線的に発行するため、長距離でもコンテンツの鮮明さが落ちないことが最大の強みです。
また、ユニットの組み合わせによりサイズは比較的自由に設計でき、簡単に存在感を作り出すことが可能です。
このため、人の視線を惹きつける事が簡単で、メッセージを直線的に長距離かつ広範囲に訴求できるため、「集客」の効果は圧倒的に高いことで知られています。
LEDビジョンについては
LEDビジョンとは のページで別途詳しく記載しているのでそちらをご覧ください。
<メリット>
・抜群のインパクト効果がある
・サイズの自由度が高い
・長距離かつ広範囲での訴求にたけている
・思っている以上に扱いやすい
<デメリット>
・値段が下がったとはいえディスプレイとくらべて高額
・消費電力が高い
・保守サポートまで対応してくれるベンダーが少ない
・粗悪商品がよく出回っている
・コンテンツのサイズをLED用のサイズで作成する必要がある